■夕張メロンの商標
夕張メロンは、商標を取得しています。

↑夕張メロン商標の一部
(商標とは商品の分野別に出すので、夕張メロンゼリーと夕張メロンでは、区分を分けて取得する必要があります。夕張メロンは、メロンだけではなく、メロン加工品でも商標を取得しているので、ロゴやシールも合わせると50ほどの商標を取得しています。)
※画像は、特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP]のHP
夕張メロンの商標の権利者は、夕張市農業協同組合でありますので、その組合員(農家さん)のみが独占して使用できる。
つまり、他市町村のメロンは夕張メロンを名乗ることができない、というわけです。
■夕張メロンの定義
夕張メロン商標の権利者である夕張市農業協同組合のホームページには、夕張メロンの明確な「定義」というものは載っておらず、定義は明確に設定されていない、または明示公開はされていないかと思います。
定義ではないものの、夕張メロンには共撰品と個撰品があります。
@共撰品
夕張農協の審査を通過したもの
糖度、ネット、形状、大きさなどで「特秀」「秀」「優」「良」と4段階 の等級がある
A個撰品
共撰品にもれたもののうち、個々の農家さんがOKだと出荷するもの
(個人の判断)
B上記以外(規格外)
個撰品にもなれないものは、ゼリーやジュースなどの加工品へ
→規格外品も、加工品としては夕張メロンを名乗れます
(夕張メロンゼリーなど)
上記の通り、規格になれるかどうかはおいしさ(糖度)の他、大きさやネット(網目)も大きく関係してくるため、一概に共撰品のほうが品質がいいとは言えませんが、
個撰品については、個々の農家さんによる独自の栽培で、個々の農家さんによる選定基準で、「夕張メロン」として出荷されているということになります。
なお、本筋とは離れますが、
●共撰品→白い箱
●個撰品→茶色い箱
で流通しているとのことで、ギフト用なら白箱、ご家庭用にコスパ良く美味しくであれば、茶色い箱をとのこと。
昨日の松阪牛に並んで、ちょっと意地悪な言い方をすれば、規格や等級に関係なく、夕張農協の管轄であれば、独自の判断でも夕張メロンを名乗れ、加工品も含めれば全て夕張メロンと名乗れちゃうということです。
(取材したわけではありませんので、加工食品についてなど実務としては違っているとしたら申し訳ありませんが、少なくとも対外的な表記としてはそう読めます。)
ではでは、一方、昨日悪口のように書いてしまった松阪牛!
取組として、とてもきちんとされている部分も多いので、記載していきます。
■松阪牛の商標
松阪牛は、地域団体商標※を取得しています。
権利者は、松阪肉事業協同組合の他、松阪農業組合、伊勢農業組合など生産地区の農業組合も含めた複数主体が権利者となっております。

※画像は、特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP]のHP
松阪肉事業協同組合は、松阪市内の松阪肉に携わる食肉事業会社の組合です。
※地域団体商標とは
商標は通常、「普通名詞(犬やトマトなど)」や「地名」のみでは取得できません。
しかし、地域ブランド保護の観点から、一定の知名度を前提に、「地名+商品(サービス)」の商標を、地域に根差した団体(農業法人や商工会など)が取得できるよう、要件が緩和された商標を登録商標といいます。
松阪牛は、2006年4月1日の施工日に出願していますね。
登録は2007年2月なので、初回登録(2006年10月)の52件には入っていないようですが、地域団体商標の黎明期からの登録商標です。
ちなみに、夕張メロンは全国知名度があるため、商標の特例措置(商標法3条2項)を使って地域団体商標ができる前から商標を取得していたため、地域団体商標ではありません。
■松阪牛の定義
松阪牛の定義は、松阪牛協議会によって明確に定められています。
松阪牛協議会は、松阪牛個体識別管理システムに加入している生産者(肥育農家)と
松阪牛生産地域の市・町で構成されており、現在の会長は松阪市長です。

※画像は、松阪牛協議会HPより
▼松阪牛の定義
・黒毛和種、未経産の雌牛
・松阪牛個体識別管理システムに登録されていること
・松阪牛生産区域(旧22市町村)での肥育期間が最長・最終であること
※生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入され、
導入後の移動は生産区域内に限る。
以上の条件をすべて満たし出荷されたものが松阪牛と定められています。
▼個体識別管理システム
全国の個体識別管理に先駆けて導入されたものとのことで、サンプルによるととても細かい情報が載ってます!
肥育場所や期間などの基本情報の他、牛ちゃんの名前、血統、おじいちゃん牛おばあちゃん牛のお名前までわかっちゃいます。笑

※画像は、松阪牛協議会HPより
これに加えて、農家情報、と畜・出荷情報も記載されています。
▼肥育農家さんの情報
そして、肥育農家さんの情報も、氏名・顔写真付きでHPに公開されています。

※画像は、松阪牛協議会HPより
きちんとした管理体制を取り、定義や生育過程を公開していくことで、
●品質を確保していこう
●ブランド価値を向上させよう
という気概が感じられます!
ですので、ザーーーーーックリ言いますと、
■夕張メロン
・夕張市のみ
・品質や要件について明確な定義はない?
(HP等にはなし)
・管理体制、選定基準は相対的に厳しくない
(個々の農家による個撰品も夕張メロンを名乗れる)
■松阪牛
・松阪市以外の定められた周辺市町村もOK
・定義を明確に定め公表
・個体番号も配した情報公開、品質確保
なので、題名は、地域の夕張メロン、品質管理の松阪牛としました。
■番外編:神戸ビーフの定義
そして、松阪牛よりさらに厳しく、肉質基準を満たさないと認められないのが神戸ビーフです。
神戸ビーフの地域団体商標権利者は、神戸肉流通推進協議会。
神戸ビーフは、但馬牛の上位概念というか、但馬牛のうち基準を満たしたものが神戸ビーフになります。
但馬牛自体の定義も厳しく、(ザックリ抜粋)
・繁殖から肉牛として出荷数するまで登録会員
・生後28ヵ月令以上から60ヵ月令以下の雌牛・去勢牛
=生まれも育ちも但馬牛なんですね。

※画像は、神戸肉流通推進協議会HPより
そして、神戸ビーフを名乗れるかどうかは、但馬牛のうち、最後の食肉になったに高い等級を確保できたもののみとなります。
要件に該当しなかったものは、単なる但馬牛として出荷されます。
また、元となる但馬牛自体にも等級要件があり、肉質等級があまりに低ければ、但馬牛とさえ表記することもできません。
■生産地域以外の条件
・夕張メロン 個々の農家判断(農協に選ばれた共撰以外も可)
・松阪牛 和牛、未経産雌。個体識別などの管理
・神戸ビーフ 繁殖から出荷まで登録会員。等級など肉質条件
消費者としては商標を取得していれば、権利団体がどう定義・管理しているかなんて、あまり気にしませんが、団体によってブランドをどう保護していきたいかという意識・手法は大きく違い、それがその後の品質確保、売上に影響を与えていく。
商標は、単にとった!で終わりではなく、その後の管理&活用が鍵になるということですね。
さてさて、今日で終えようと思っていたのですが、なるべく正確にと思いますと記載が長くなってしまい、続けて両者(+神戸ビーフ)のブランディングについて記載すると分かりにくくなりそうです。
両者のブランディングについての記載は、明日させてください!
しかも、更新遅れちゃいました。
ゴメンナサイ!
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〇希少性か、存在感か