2021年02月17日

薄利多売はボッタクリの対義語の美談か?

うちの母は、商業高校だったらしいんですが、なぜか「薄利多売」という言葉だけをガッツリ覚えておりまして、呪文のように唱えておりました。笑
薄利多売、企業さんが儲けを失くしてでも、お客さんに尽くしてくれる姿勢だそうです。

ただ、、、
本当にそうでしょうか??


■親切な田吾作さん
村には、太郎さん、次郎さん、三郎さん、そして田吾作さんがいました。
みんなは、ワラジを編んで暮らしていましたが、田吾作さんは夜なべしてたくさんのワラジをつくりました。

田吾作さんは働き者でした。
太郎さんなど3人は草鞋を100足つくりましたが、田吾作さんは150足つくりました。


太郎さんがた3人は草鞋を10円/足で売っていましたが、田吾作さんはたくさん作ったので草鞋を8円/足で売ってあげました。
村の人は8円でワラジが買えて、とても喜びました。

めでたしめでたし。
1850357_s.jpg

これは、とっても良い話です。
勤勉な田吾作さんのおかげで、村人はみんな得をしたんです!

昔話であれば、田吾作さんには、かわいいお嫁さんが来たりして幸せに過ごすことでしょう♪


企業であっても、もうけは少なくていい、喜んでもらいたい!
という気持ちで、一生懸命作って、一生懸命安く売って。
そんな頃は、美点でした。

薄利多売は、ボッタクリの対義語
誠実さの証だったのです。



■潰れた魚屋さん
さてさて、時代は変わりまして、魚屋さんのお話しです。

町には、Aさん、Bさん、Cさんの3人の魚屋さんがいました。
サンマの仕入は70円だったので3人は、サンマを100円で販売。
どの魚屋さんも一日10匹のサンマを売っていました。

〇三人の魚屋さん
A (100円−70円)×10匹=300円
B (100円−70円)×10匹=300円
C (100円−70円)×10匹=300円

3人の利益合計 300円×3人=900円
魚屋.png


ところが、大きなスーパーが進出してきて、サンマを80円で売りだしました。
三人の魚屋さんは魚が売れなくなり、失業してしまいました。

〇スーパー (80円-70円)×30匹=300円
〇三人の魚屋さん 販売0匹 利益0円

スーパーと3人の総利益 300円
魚屋スーパー.png



■田吾作さんとスーパーの違い!
なんとなーく、肌感として、田吾作さんは良い人だけど、スーパーはえげつないなぁ・・・ってきがしますよね。笑
では、田吾作さんとスーパーの何が違うか考えてみましょう!

一つに
〇需要がいくらでもあった時代的背景。
圧倒的にモノが不足していた時代には、商品があればいくらでも売れたました。
良いものを安く出してくれて、大量に流通させてくれることは、とてもありがたい。
庶民の味方だったわけです。


もう一つに、
〇薄利多売を可能にする理由。
昔は勤勉誠実が薄利多売を可能にしていました。
しかし今、薄利多売を可能にしているのは、圧倒的なバイイングパワーなんです!
つまり、圧倒的な資金力、圧倒的に流通を抑える力、資金力がないものは、誠実であっても勤勉であっても、薄利多売ができないんです!

巨大な流通網を持った企業が、大量の物流を行ってしまっては、地域の魚屋さんはひとたまりもありません。
町の魚屋さんは全滅してしまいます。
薄利多売.png




■可哀そうだから助けて、ではない
ただし、私は、
「中小企業が可哀そうだー! 大企業のバカヤロー!」という意識でこういう文章を書いているわけではありません。

大企業・中小企業の区別なく、値下げをするということは、自分のいる市場の価値を棄損させることであり、一見、消費者の為とみせながら「奪う」マーケティングは市場を疲弊させるからです。


〇三人の魚屋さん時代
 サンマの市場規模 100円×10匹×3人=3,000円
 サンマから得られる総利益 30円×10匹×3人=900円
   →三人の魚屋さんが生活できていた

〇スーパーが販売した場合
 サンマの市場規模 80円×30匹=2,400円
 サンマから得られる総利益 10円×30匹=300円
   →三人は失業し、スーパーしか生き残らなかった
    しかも、スーパーも薄利多売で大儲けしているわけではない
失業.png


ここで問題なのは、サンマの市場が縮小していること。
そして、売上減少以上に、サンマ市場からの利益が激減していること。
売上減少:3000円−2400円=600円 △20%
利益減少:900円−300円=600円 △66.6%
そして、その市場で食っていける人間が減って、失業者が出ていることなです。


薄利多売は、一見消費者のためになっているように見えて、労働者を疲弊させている。
前の投稿(消費者の幸せが国民の幸せというまやかし)で書いたように、消費者=労働者ですから、労働者が疲弊しては国民全体が疲弊していきます。



■美談ではない「薄利多売」
「薄利多売」という言葉は、未だに美談のように語られますが、企業努力という名の強大なバイイングパワーを背景にした「薄利多売」は、市場を縮小させ、失業者を生み、貧富の差を拡大させ、社会を疲弊させるのです。
3131834_s.jpg


薄利多売は、市場を疲弊させるもの。
貧富の格差を増大させるもの。


もちろん、私も安売りしてもらったほうが嬉しいですし安売り店にもいきます。

また、話を単純化しましたが、実際には魚屋さんだって努力が必要でしょうし、
また地域コミュニティーではなく、全国的な流通、また世界的な経済の影響もありますので、一社が薄利多売を辞めます!と言っても、どうしようもない側面はあります。


ただ、例えば、お肉を食べる時には、犠牲となった動物に思いをはせるように。
持続可能な社会、持続可能な世の中を実現していくために、薄利多売が美談と綺麗ごとの上に成り立っているのではないということは知ってほしいかなとは思っております。
posted by 秋田舞美 at 06:00| Comment(0) |  3−1.◎秋田流マーケ思考
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。