昔、知らないことは恥であり、「知らない」ことが相手にバレることは、無能さを悟られることだと思っていた時期があります。
なので、お問い合わせがあったけど、自分の詳しい分野ではなかったときは、本を買って勉強してから臨んだりしておりました。
けれど、今は違います。
今、私はマーケティングのプロとして自分の専門知識に自信を持っているので、他分野について無知であることを隠す必要がありません。
知ったかぶりをせずとも、自分の専門に自信があるから、胸を張って「知らない」ということができます。

■既知を装うのは罪
無知を隠すのは、自信がないからだけではありません。
金銭的な理由その他から、仕事を取りたくて、故意に無知を隠す場合もあります。
ただ、15年以上、中小企業診断士という資格を保有してきて、企業の倒産にも数件立ち会いました。
そして、自分が相談に乗った社長さんが、数か月後に命を絶ってしまうという経験もしました。
専門知識とは、多少、本を読んだだけで補えるものではありません。
チャレンジするのは悪いことではありませんが、企業はコンサルタントの実験場ではありません。
誰も挑んだことがない分野だからと、双方の合意でチャレンジするのは別ですが、自分に経験がある風を装って、自分が知っているふりをして、よく知らない業務に挑むのは、罪意義あの何物でもありません。
企業は、私のアドバイス次第で倒産することもあり、経営者、その家族、従業員、そしてその家族、皆が路頭に迷うことだってあり、
経営者が命を落とすこともあり得る。
無知を既知と言い換えることは、場合のよっては殺人にも等しい行為です。

■無知を隠すのは悪
中小企業診断士のお仕事は、独占業務があるわけではありませんが、
士業の多くが独占業務を持ち、事務作業負担の割には高い報酬を請求できるのも、「プロ」として仕事をしているからにほかなりません。
その分野に関し専門的な知識を有すこと。
そしてその専門性から、確率の高い解決手法を導くことができること。
そして、その関与が結果に大きな影響を与えること。
それが、士業であり、
武士の「士」という文字が当てられている理由だと思います。
失敗をするのは良いことではないけれど、悪ではありません。
ただ、できないことについて、できるふりをして仕事を取るのは悪であり、プロとしての風上にも置けない行為です。
