「ダメだと思ったら、すぐに辞めてね」
「自分を壊しちゃいけない」
「向いている企業はたくさんあります!」
時代的なものもあってか、特にTwitterでは、「逃げる」ことを肯定するアドバイスが溢れていました。
もちろん、心身両面での体調をくず前に、きちんと離脱することは大切なのですが、それがどういう人の心に刺さるかは、なかなか難しいものがあります。
というのも、「もっと頑張ろう」は、頑張りすぎな人に刺さり、
「頑張り過ぎずに自分を大切に」は言い訳をしたいサボりがちな人の心に響いてしまうのです。

もしかしたら、上記のような「逃げ」を肯定するメッセージは、「逃げ」を日常としてしまっている主体に、強く訴求することになってしまっているかもしれません。
(メッセージを送ることは自体は、素晴らしいと思います)
他にも、例えば、
「むやみに救急車を呼ばないで」も、元から遠慮深い人はさらに遠慮することになるのに、本当に遠慮してほしい人にはメッセージが届かなかったりもする。
情報の伝達って、本当、難しいですね。
■メッセージの選択性
首題の通り、
「多くの人は、見たいと欲する現実しかみない(※下部注)」
ものです。
これは、ユリウス・カエサルの言葉とされますが、
人は自分に興味がある情報にしか注意を向けない。
自分と感性があう情報だけを積極的に選択していく傾向があるのです。
※塩野七生氏のローマ人の物語に出てくるものですが、カエサルの台詞の正確な表現としては存在せず。
塩野氏による「人はほとんどの場合、望んでいることを喜んで信じる」の意訳ではないかと言われています。

※画像は、塩野七生先生のローマ人の物語より
ユリウス・カエサルの章 6冊
マーケティングでも苦労する点ですが、メッセージはそれを届けたい主体が、うまく趣旨を認識するように発信する必要があります。
けれど、発信主体と受信主体の根本常識があまりに違うと、それがなかなか困難。
マーケティングの際には、伝えたい人に伝わるか。
伝えたくない人にだけ、強く伝わる表現になっていないか。
注意して見ていかなければいけません。
■確証バイアス
この「信じたいものしか見ない」という傾向は、似たような状況を表す心理学の用語がありまして。
確証バイアス(confirmation bias)といいます。
これは、仮説などを検証する際にそれを肯定する情報ばかりが目に入り(肯定する情報ばかりを収集し)、反証となる情報を無視または集めようとしない傾向のことをいいます。
結果として、実は少数である事象を、本来の確率よりも高く発生する事象と誤認することです。
ザックリ言うと、「Aじゃないかと思いこむことで、Aにあてはまる事例ばかりが目に飛び込んでくる」ですかね。
例)黒とピンク
黒よりピンクを好む人が多いのではないか?
↓
黒よりピンクを好きな人ばかりが印象に残る
(山田さんも、田中さんも、高橋さんも・・・)
↓
多くの人が、黒よりピンクが好きだと結論づける
※実際は、黒よりピンクを好きな人は20%であるのに

こうして、心理学の用語にもなっているほど、人は「見たいと欲する現実しかみない」傾向のある生き物なのです。
■フィルターバブル
確証バイアスを調べ直していて、私も今日知った言葉なのですが。
フィルターバブル(filter bubble)という言葉を見つけました。
YouTube、Facebook、ソーシャルメディアでは、自分が今まで見てきた履歴に従って、表示される記事・投稿が選択されていきます。
Googleなどのアルゴリズムも詳細に公開されてはいませんが、個人の検索履歴が検索結果に影響を及ぼしていると言われています。
よって、興味のある情報しか提供されてなくなっていくという環境のもと、興味のあるものだけしか見ないという傾向は、さらに加速されていくことになります。
この現象をフィルターバブルというそうです。
「インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること。
(Wikipediaからの引用です)

好む趣向を選別してもらうということは、雑多な情報を排除し、情報のインプットを快適にする一方、中立的なバランスの良い情報選択を阻害することは自明の理でしょう。
ちょうど最近、YouTubeをよく見ている方の一部で、思想の偏りが激しくなってきていると感じる場面もあり、こういった事象に対する警笛は今後重要になってくるかも。
マーケティングの問題のつもりで記載していた文章なのですが、なんだか社会問題への懸念になってしまいました。
■新入社員の方へ
私のブログ読む人で、新入社員のかたは少ないかもしれませんが、一応。
本当、おばちゃんっぽいアドバイスで恐縮ですが、まず3か月間は頑張ってみてください。
新卒入社って1回しかできないんです。
本当に、殺されそうな激務や明らかに犯罪の香りのする企業であれば別ですが。
99%以上は3か月は勤めたほうがプラスになる企業だと思いますし、8割は3年は務めたほうがプラスになる企業だと思います。
(素晴らしい会社だったのに、2年半で辞めた私が言うことではありませんが。)
(私の新卒入社の企業についてはコチラの投稿を)
何か、地に足のついた分野で、他にやりたいことができたのでしたら別ですが、追っているものが夢であれば、お仕事と両立はできませんか?

本当、詰まらないことしか言えずにスミマセン。
ただ、夢を追って成功した、超人的な才能のあるかたのアドバイスを鵜吞みにすると、人生を転げ落ちかねませんので。
私のこのアドバイスを含めて、アドバイスした人間は責任なんて取ってくれませんから。
過剰に信じちゃいけません。
「多くの人は、見たいと欲する現実しかみない」ことを心に刻んで、自分でリスクを見定めて行動できるようになってくださいね。